入院中の患者さんにとって、ご家族の支えはとても心強いもの。
まして療養病院である、私たち箱根病院の患者さんにとってはなおさらです。
「病院内でいかに、大切な方と過ごす時間が有意義になるのか」
患者さん含めた、ご家族の幸せな一時について考えるきっかけをくれました、
パーキンソンの佐藤(仮)さんと、その奥様との物語をご紹介します。
最愛の奥様の面会
パーキンソンの佐藤さんには、最愛の奥様が毎日、面会に来ていました。
奥様が来られた時の佐藤さんは、本当に嬉しそうにしていました。
佐藤さんが入院していたのは、6人部屋の一室。
奥様は他の患者さんに気を使い、病室での面会は少しの間。あとは一人で散歩するなどして過ごされていました。
箱根病院では機能別の看護という方法を採用していましたので、車椅子に乗車する時間は決められています。
そのため奥様と一緒に病室の外へ、車椅子で出ることは難しかったのです。
奥様との車椅子デート
私はどうにかして、奥様と二人だけになる時間を作ってあげたいなと思い、一日の計画を見直したのです。
リハビリの時間を調整し、車椅子への乗車を奥さんが来院する時間にし、
奥様が車椅子を押して、二人で散歩することができるようになったのです!
奥様は佐藤さんが亡くなるまで毎日来院され、車椅子デートを楽しまれていました。
貴方が診てくれて良かった
佐藤さんが亡くなる前に、私に話してくださった言葉は「貴方が診てくれて良かった」という言葉です。
本当に嬉しそうに、お二人で散歩される姿が、今でも目に焼き付いています。
本来ならば、プライマリー看護として、個々の患者さんの状態を考えた個別性のある看護を提供するべきだと思います。 しかし看護師数や時間など制限される条件の中で、理想的とは言えない看護を実施せざるを得ないことも現実です。
しかし、佐藤さんからの「貴方でよかった」という言葉をもらったあの日。
私は、患者さんのQ.O.Lが少しでも潤いのあるものにするために、
「今私は、何ができるのか」と考える事のできる看護師でありたいと、自分自身に誓ったのでした。